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電磁波解析事例

ナノ粒子/ナノデバイス

構造色に関する電磁波解析事例

この度、かぎけんHPを新装しました。トップページではカワセミやモルフォチョウ、スズメダイなど、体の一部や全体を極彩色に纏った美しい生き物をご紹介しています。

これらの魅力的な色彩は色素によるものと思われるかもしれません。しかし実は波長と色を示す場所のごく小さな構造との組み合わせで発色する「構造色」という現象です。

これまで多方面で多くの研究者が顕微鏡写真の撮影や実験などにより構造色の解明を試みてきました。
ここでは、自社開発した電磁波解析ソフトKeyFDTDをモルフォチョウとモスアイについて構造色を数値解析或いはシミュレーションした例をご紹介します。

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Example of electromagnetic wave analysis on structural color

We have recently redesigned our website (‘Science & Technology Inst., Co, in Japan’ abbreviated as ‘Kagiken’). On the top page, we introduce beautiful creatures such as kingfishes, morpho butterfly, and sparrowhawk, whose bodies are partially or entirely clothed in extreme colors.

You may think that these attractive colors are caused by pigments. In fact, however, they are actually a phenomenon called “structural colors,” which are produced by a combination of wavelengths and tiny structures at the location of the color.

Until now, many researchers have attempted to elucidate structural colors by taking micrographs and conducting experiments.
Here, we introduce examples of numerical analysis/simulation of structural colors of morpho butterfly and moth-eye using KeyFDTD, an electromagnetic wave analysis software developed in-house.

構造色とは何か?

「構造色は、光の波長あるいはそれ以下の微細構造による、分光に由来する発色現象を指す」(Wikipedia)

可視光の波長は一般的に350nm~820nmといわれていますから、ここでいう微細構造はおよそ数百ナノメートル程度~数マイクロメートルの大きさを持つ構造です。特定の波長が反射され構造色が発現するためには、形状や構造の繰り返し、屈折率の組み合わせなどの条件が揃うことが必要です。

構造色が発現する仕組み

構造色が発現する仕組みには何種類かあります。例えば、オウムガイの場合は、薄い多層膜の各層から出る反射光が干渉して構造色が発現します。カワセミや、モルフォチョウ、クジャクの場合は、翅の鱗粉が複雑な3次元周期構造をしていることにより構造色が発現します。一方、色とは言えないかもしれませんが、一切光を反射せず「黒く」見える蛾の目は表面に鋭い円錐形の構造が並ぶことで全ての波長の光を反射しない「構造色」です。

構造色を電磁波解析する

皆さんは電磁波解析というと電子レンジやスマホなどの電子機器から発せられる電磁波を扱うものというイメージが強いかもしれません。しかし、光も電磁波の一種ですから構造色を研究・再現するのにも電磁波解析ソフトは役立ちます。

ここでは電磁波解析ソフトKeyFDTDを使ったモルフォチョウの構造色と、モスアイ(蛾の目)構造を解析した事例をご紹介します。

解析事例 モルフォチョウ

モルフォチョウの鱗粉は表面に襞が付いた規則的な溝(3次元周期構造)が存在します。この構造の溝の間隔を変化させたとき光の反射スペクトルの変化を電磁波解析によってシミュレーションしました。

1)解析モデルと解析結果

鱗粉の解析モデルを図1に示します。鱗粉の1層の溝幅は、0.1、0.125、0.15,0.175[μm] としました。
数値シミュレーションの結果、各鱗粉の溝幅と反射光波長により現れる色彩で構造色を示しました。

モルフォチョウの解析モデル図

図1 鱗粉の解析モデル

シミュレーション結果

図2 解析結果-各鱗粉溝幅と、反射光波長、構造色の関係

周波数と色の関係

2)結果のまとめ

解析結果とモルフォチョウの蝶翅色の関係を以下にまとめます。但し、ここでは反射率が卓越する周波数の色が色彩として反映するものとします。鱗粉の溝構造の間隔が狭いほど短波長側(青)に見えて、間隔が広くなると波長の長い緑→黄色に変化することが端的に示されました。

■青いモルフォチョウ

シミュレーション結果-

解析条件と結果 鱗粉の溝構造の間隔を0.1 μmにした場合

青色のモルフォチョウ

実物の青いモルフォチョウ「レテノールモルフォ(フレンチギアナ)」

 

■緑色のモルフォチョウ

シミュレーション結果-緑

解析条件と結果 鱗粉の溝構造の間隔を0.125 μmとした場合

実物の緑色のモルフォチョウ「メネラウスモルフォ♂(ブラジル)」

 

■黄橙色のモルフォチョウ

シミュレーション結果-黄色

解析条件と結果 鱗粉の溝構造の間隔を0.2 μmとした場合

橙色のモルホチョウ

実物の黄橙色のモルフォチョウ「カキカモルフォ♀(ペルー中部)」

 

解析事例 モスアイ構造

蛾の目

モスアイ(蛾の目)

モスアイ(Moth Eye)とは、「蛾の目」のことです。蛾の目には微細な凹凸があり反射を防ぐ効果がありこの構造は「モスアイ構造」と呼ばれます。太陽光電池では、平滑なシリコン基盤に太陽光を直接入射してもほぼ反射してしまいエネルギー効率を向上させることが出来ません。反射を少なくするためのモスアイ構造の活用が期待されています。

解析の目的

シリコン上に加工されたモスアイ構造により可視光がどのように反射、透過するかを弊社開発の電磁波解析ソフトKeyFDTDを使って数値シミュレーションしました。特にモスアイ構造の高さによる影響に注目しました。

解析モデル

蛾の目は6角形の複眼で表面が微細な円錐が整列した構造をしています。その底面の直径は300[nm]程度で高さは200nm〜250nmです。そこで解析領域を、200×200×3000[nm]とし、厚み900[nm]のシリコンに高さ100、300、600[nm]の円錐体を加えた表面形状と、構造がない表面に、波長350~750[nm]の平面波が垂直入射する条件で解析しました。解析モデルを図3に示します。

モスアイモデル

図3 モスアイ構造

解析結果

数値解析結果から、モスアイ構造の高さhが高くなることで、「広帯域の波長(可視光)に対して、外部にへの反射光を限りなく0に減らせる」ことが分かりました。特に、h=600[nm]における構造を作成した場合、反射率は2%以下となり、この結果は実験値と同様の結果が得られました。

 

モスアイテーブル

モスアイ結果

 

参考文献
モルフォチョウの構造色の解析 株式会社科学技術研究所 藤田明希ブログ
Moth-Eye構造の可視光反射抑制効果のFDTD解析によるシミュレーション
Moth-Eye構造(PDF)
かぎけん昆虫図鑑