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構造色の電磁波解析

電磁波解析ソフトKeyFDTDを用いることで光とナノ構造の相互作用を可視化できます。
このページではモルフォ蝶などに見られる構造色を取り上げて解析事例を紹介します。

構造色とは

特定の色素を持たず、光の波長と同程度の微細な構造による発色を構造色といいます。
身近な例では石鹸の泡やCD-ROMの裏面で構造色が見られます。
自然界でも自然界でもモルフォ蝶の翅や孔雀の羽、熱帯魚の表皮など多様な生物に見られます。
色素による発色は一部の光を吸収するため経年劣化により退色します。一方、構造色は光を反射して発色するため構造が崩れない限り退色しません。
モルフォ蝶:翅の独特な青色は色素ではなく鱗粉の微細構造による構造色です。
ルリスズメダイ:表皮にある虹色素胞が青色の光のみ反射するため構造色による青色を示します。

構造色の仕組み

構造色はマイクロ~ナノスケールの微小構造によって特定波長の光が干渉により強め合うことで色を示します。
薄膜や周期構造が基本的な構造です。
薄膜の場合は、空気→膜と膜→空気の2面で反射した光が干渉して特定の色に見えます。
周期構造では特定波長の光を反射する構造を周期的に配置することで特定の色に見えます。
薄膜による例:泡などでは膜厚や角度が常に変化するため様々な色を示します。
周期構造による例:無数にある表面構造が特定の波長のみ反射することで色を示します。
モルフォ蝶が持つ青色に見える微細構造をKeyFDTDでシミュレーションした例を示します。
モルフォ蝶の翅表面にある鱗粉には数十~数百nmの微細構造が無数にあり、この構造が青色の波長を特に反射することで青く見えます。
鱗粉表面に襞が付いた規則的な溝があり、反射する波長は襞の間隔に影響されることが報告されています。
KeyFDTDで襞の間隔を変更してシミュレーションし、波長の変化を観測しました。
襞の間隔に比例して反射率の高い波長が長波長にシフトする結果が得られています。
解析モデル:モルフォ蝶が持つ微細構造をモデル化し、可視光が垂直に入射した場合をシミュレートしました。
解析結果:襞の間隔を変更して複数ケースシミュレートした。襞の間隔に比例して反射スペクトルのピークが長波長側にシフトしています。

構造色の応用例

構造色の産業応用に岐阜県産業技術総合センターが報告している金属表面の加飾加工が挙げられます[1]
金属に直接加工するため耐久性に優れるほか、着色料や作業工程に科学物質を用いないため環境負荷が少ないといったメリットがあります。
ステンレス鋼表面にレーザーで複数の酸化膜を形成し、構造色を用いて様々な色を加飾しています。
岐阜県産業技術総合センターによる構造色の応用例[1]:ステンレスの表面に複数の酸化膜で微細構造を形成し、様々な色を表現しています。

モスアイ構造

光を制御するナノ構造として構造色の他にモスアイ構造が挙げられます。
構造色が特定色の光を反射することを目的とするのに対し、モスアイ構造は光の反射を抑制することを目的としています。

例えばガラスは透明ですが、鏡のように自分の姿が映り込むことがあります。これは光が空気からガラスに入る際、屈折率が急激に変化するため、表面で光の一部が反射することが原因です。モスアイ構造はガラス表面で生じる屈折率の急激な変化を緩やかにすることで光の反射を抑制します。
モスアイ構造は円錐や釣鐘などの形状をしています。ガラスの表面に付与すると構造が可視光の波長より小さいため、表面で空気とガラスの比率が連続して変化するように振る舞い、屈折率の変化を緩やかにします。

モスアイ構造の仕組み:ガラスなどの表面での反射は屈折率の急激な変化で生じます。
モスアイ構造は屈折率の変化を緩やかにすることで反射を抑制します。
モスアイ構造のシミュレーション結果:モスアイ構造の高さを変えてシミュレートしました。
モスアイ構造の高さに応じて定在波の強度が小さくなり、反射率が低下していることがわかります。
モスアイ構造はディスプレイの表面に付与して映り込みを低減する、太陽光パネルに付与して表面での損失を防ぐなどに応用されています。従来の反射防止フィルムに比べて、広い波長帯の光に対して効果がある点や広い角度で機能する点が優れています。
株式会社三菱ケミカルホールディングスのモスアイ構造を利用した反射防止フィルム[2]
フィルムの貼られた右半分には映り込みがない

上記のような対象に対し、電磁波解析ソフトKeyFDTDは一度の解析で光学特性を導出できるなど、パラメータサーベイを効率良く行えます。
メールやWeb会議でのご相談、ご質問は随時受け付けておりますので、シミュレーションをご検討の際はぜひ弊社にお問い合わせください。

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[1]田中等幸ら、レーザーによる顔料を使用しない金属製品への着色技術および岐阜ブランド製品の開発(第5報)、岐阜県産業技術センター研究報告 第1報、PP.25-26
[2]株式会社三菱ケミカルホールディングス,” 反射防止フィルム『モスマイト』”,NEWS LETTER Vol.5(2019. 8.2)