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解析事例(マルチモードキャビティによる培地加熱)

 
例題としてマルチモードキャビティでポリスチレン製のシャーレに入った液体培地に2.45GHzでマイクロ波照射する系を取り上げます。キャビティ内部は37℃に保たれているものとします。主目的は液体培地内部の温度分布を検討するために電界・加熱量分布が一様なのか、不均一なのかを確認することです。
なおこのタイプのキャビティの場合、多くの場合同軸ケーブルで給電され内部に配置されたパッチアンテナでマイクロ波照射します。このモデル化は少々難易度が高いので、ここではパッチアンテナに相当する位置に配置されたTE10モードの導波管からマイクロ波照射するモデルでテスト解析を行うこととします。

物性値の取得

 
物性値取得のポイントは電磁波の波形、周波数、温度です。波形については多くの場合は正弦波を用いるのでこの場合は特別の考慮は必要ありません。一方、パルスや変調波の場合では多くの場合物性値の分散モデルの使用が必要です。
FDTD法ではマクスウェル方程式を解いていますが、この方程式の物性値は一つの周波数に対する固定値を仮定しています。パルスや変調は周波数スペクトルが存在するため、この考慮のために分散モデルを使用します。
また電磁波解析で用いる複素誘電率は周波数や温度に依存します。解析目的の電磁波の周波数・温度における値を取得する必要があります。
なお樹脂のような高分子は重合度や成型法によって誘電率の値が異なる場合や異方性が存在する場合もあります。このためメーカー提供の値があればそれを用いますが、シミュレーションの現場では代表的な値を探して代用するのが一般的です。

モデルの作成

 
  • 使えるメッシュは2~3Mメッシュ
  • 解析領域内で最も小さな形状はシャーレの厚み
  • 厚みを完全に再現すると完全にメッシュ不足
  • 解析領域内で最も誘電率が高いのは培地
  • 培地の誘電率εから考えた波長λに対してメッシュ幅
  • 解析領域のサイズから考えて各方向のメッシュ分割数を考える
  • 「メッシュが多い方が高精度」はほどほどに
テスト解析ということで、解析モデルのメッシュ数を2Mメッシュ程度に抑え、解析時間を短縮したいところです。シャーレの材質の厚みは1[mm]以下なのでこれを再現しようとするとこの上限を超えてしまいます。シャーレの厚みは解析結果に大きく影響するでしょうか。この厚みをどのようにモデル化するかがポイントです。
同時にメッシュ数あるいはメッシュ幅が満たさなければならない条件も存在します。メッシュ幅は波長λの1/10よりも小さい必要があります。この時の波長は解析領域の最も誘電率の高い位置での波長を考慮します。今回の解析対象では培地の誘電率が最も高く、この位置における波長のλ / 10以下になるメッシュ数を設定しなければなりません。

境界条件と出力の設定

 
今回の例題では境界条件の設定はキャビティの壁面が解析領域境界面に等しい面は金属ですから設定は自明です。なお導波管でマイクロ波を照射するモデルの場合、電磁波の進行方向と反対側の境界条件は吸収境界条件を設定します。
この時、PML(Perfect Matched Layer)はその名の通り、入射するマイクロ波に対して完全に整合が取れてかつ損失の大きい層(Layer)を用いるので実質的なメッシュ数の増大を伴います。多くの場合PMLは6~12層程度のLayerを用いるので、これを含めてメッシュ数が上限を超えないように設定する必要があります。
PMLは一般的な手法では最も精度が良いため、多くの研究で用いられていますが、計算時間の増大を伴うため必ずしも第一選択肢として考える必要はありません。特にキャビティ内部の解析の場合、MUR1でも比較的良好な特性が得られます。一方でアンテナ解析などで遠方界を求めるような解析ではPMLの使用が一般的です。
また時間平均された加熱量分布はソフトウェアによっては初期設定では出力されません。加熱量分布は「損失」または「SAR」などの変数名で設定する場合もありますので注意してください。

図化処理(コンター)

 
シミュレーション結果を文書化する際に頻繁に使用されるのが電磁界の強度やSARを色やコントラストで表現したコンターです。コンターは平面上の分布を視覚的にかつ定量的に把握できる点で非常に優れています。
コンター使用時の注意点はカラーで出力した画像をモノクロまたは2色、3色刷りの印刷物で使用しないことです。カラーのコンターは赤色に大きな値、青紫色に小さな値を割り当てるのが一般的です。これをモノトーンにすると大きな値と小さな値共に濃い色で印刷されるため、非常に紛らわしい図表になります。
また多くの図化処理ソフトでは実際のメッシュ解像度で描画することは一般的ではなくメッシュ間の補間処理を行ないます。(左の図)本来の解析結果を提示するという意味では補間された描画よりもメッシュの密度が反映された描画を用いるべきであると考えています。(右の図)
論文や印刷物の仕上がり具合を考慮して、それに合わせて最初から図化処理する必要があります。

図化処理(ラインコンター)

 
ラインコンターは等値線のことです。コンターと同様、シミュレーション結果の図化処理では頻繁に使用されます。コンターに比べると値の把握が直感的には分かりにくい一方、モノトーン画像でもコンターで発生する問題は避けられます。またコンターよりも値の傾きを等値線の間隔から把握しやすいという大きなメリットがあります。
値の把握には上の図のように線の濃さを変更するケースや、ソフトウェアによっては等高線に小さな文字で値を追加できるものもあります。上記の図は線の濃さを変更した図です。
等高線に値を追加した図を使用する場合、印刷時の大きさを考慮して文字の大きさを調整しなければなりません。また.pngや.jpeg等のデータを用いた場合には文字も画像として扱われるために印刷時に判読できない可能性が高くなる点に注意が必要です。
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