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FDTD法とは 第3章

 

FDTD・FDTD法の詳解目次
第1章 FDTD電磁波解析の基礎用語
第1節 支配方程式・微分・差分
第2節 メッシュ・離散化・計算時間
第3節 励振源・境界条件・収束判定・解析の実効値
第4節 解析事例(マルチモードキャビティによる加熱)
 
第2章 FDTD電磁波解析を用いた研究計画
第1節 シミュレーションプラン
第2節 結果までの難所
第3節 プラン作成実践
第4節 解析事例(マルチモードキャビティによる培地加熱)
 
第3章 FDTD電磁波解析と仮定
第1節 マクスウェル方程式が仮定していること
第2節 分極の振る舞いに関する仮定
第3節 FDTD法に関する仮定
第4節 解析事例(2つの位相制御ポートを持つ円筒キャビティ)
まとめ FDTD法で仮定されていることと注意点・対処
 
第4章 FDTD電磁波解析結果の報告・発表・論文化
第1節 妥当性の主張文例
第2節 シミュレーション結果の提示
第3節 報告書・プレゼンテーションについて
第4節 解析事例(NaCl水溶液のマイクロ波加熱)
まとめ シミュレーションの妥当性に関する注意点・対処
 

 

第3章 FDTD電磁波解析と仮定

 

第3章1節 Maxwell方程式とFDTDの支配方程式

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(eq.1.b)と(eq1.d)に着目し構成方程式(eq.2.a)~(eq.2.c)をそれぞれ代入して時間微分の項を左辺、それ以外の項を右辺にまとめると一般的なconventional - FDTD法の支配方程式である(eq.3.a), (eq.3.b)が得られます。

 

この式の導出はほとんどすべてのFDTD法による電磁波解析に関する書籍で取り上げられています。勿論、実用的に妥当な導出で問題はないですが、導出過程に様々な仮定が暗黙の裡に存在しています。
この章の前半ではこの暗黙の仮定を一つ一つ確認することで、FDTDシミュレーションを研究で自信をもって活用するためのポイントを把握します。「マクスウェル方程式自体の仮定」、「分極に関する仮定」、「物性に関する仮定」、「FDTD法に関する仮定」の4つに分けて説明を進めます。

マクスウェル方程式が仮定していること-1

 
マクスウェル方程式は巨視的な電界E及び電束密度D、磁界H、磁束密度Bの空間と時間における関係を示しています。つまりマクスウェルはこれらの関係を巨視的な事実から見出したものと考えられます。
マクスウェル方程式が王立学会で発表されたのが1864年のことです。周期表の元となった考え方をロシアのメンデレーエフが提唱したのが1869年ですからマクスウェルの頭の中には周期表のことはなかったはずです。電子の実証的な発見である減圧ガラス管内での放電を行いガラス管が蛍光を発するのが陰極から出る何らかの放射線が原因であるとヒットルフが発表したのが1869年、J.J.トムソンがその放射線の電荷と質量を計測したのが1890年代です。
マクスウェルの時代には電気と磁気は実証され研究されていましたが、電子はその存在に気づきつつある時代で電気と電子がまだ今ほど密接につながっていなかったのです。つまりマクスウェル方程式は電子やイオンを一切語っていないのです。そのためconventional - FDTDの(eq.3.a)と(eq.3.b)は電子運動の把握が必要な現象、例えばマイクロ波による放電、パーコレーション、周波数分散、分極の遅れなどを扱うことが出来ません。

マクスウェル方程式が仮定していること-2

 
電磁波が物質を透過するとき損失があれば、エネルギーは熱に変わり物質を加熱します。この現象はマクスウェル方程式のどの項で表されているでしょうか?正解は(eq.1.d)のIであり対応する(eq.3.a)の右辺第1項です。マクスウェル方程式では損失は電流が流れた時の抵抗による損失として表されます。
マイクロ波に代表される電磁波が電流を流さない誘電体を伝搬する場合はどうなっているのでしょうか?その損失は誘電損と呼ばれその大きさは複素誘電率の虚部ε”で表されます。conventional - FDTD法ではε”を用いて損失として等価となるσ=2πfε”ε0を用いて損失を考慮します。電流の損失と誘電損失は本質的に異なる現象ですが、共に量的に電界の2乗に比例するのでこのような扱いが可能なのです。
またマクスウェル方程式は電界と磁界に対して非対称な式になっています。これは電荷には単電荷が存在するのに対して、磁界は双極子しか存在しないという記述がされているだけではありません。
(eq.1.b)と(eq.1.d)を比べると電荷密度の時間変化に電流があるのに対し、磁束密度の時間変化には電流に相当する項はありません。これは「磁流」という物理現象が存在しないためと説明できます。電界の損失は電流の項で表されていましたが磁界の損失は表す項がありません。特定の条件の金属粒子は磁界で加熱できることが知られており、電磁波で磁界が損失する現象は実際に存在します。これらをシミュレーションする場合は(eq.3.b)に上のようにσhを加えた形の式を用います。

マクスウェル方程式が仮定していること-3

 
物質の誘電物性ε’とε”は周波数に大きく依存することが知られています。この考慮は、後述する有限早さの分極を考慮するで紹介します。またε’とε”は物質の温度によっても変化します。しかしマクスウェル方程式と構成方程式には温度Tは含まれません。
電磁波で発生する熱による温度変化は物質の誘電物性を変化させますがこの考慮はマクスウェル方程式ではできません。セラミックの焼成プロセスなどではこの考慮は非常に重要ですが、電磁波解析→温度解析→電磁波解析→温度解析→…の繰り返しを行い電磁波と温度を連成させる必要があります。
また一般的に流布している「誘電物性」は温度が明記されていないものも多く、解析で採用する際に注意が必要です。
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第3章第2節 分極の振る舞いに関する仮定

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分極の振る舞いに関する仮定
 
構成方程式(eq.2.a)~(eq.2.c)は時間変化の項を含みません。例えば電束密度と電界の関係を示した(eq.2.b)は電束密度が電界の値に対して、誘電率を比例定数として瞬間的に必ず比例することを表しています。
電磁波の周波数が十分低く、分極が電界の変化に対してついていける場合は妥当なことは想像できます。つまり上図の「構成方程式が描く素早い分極」を記述しています。
多くの誘電体でこの仮定は近似的に妥当なのですが、液体では少し事情が異なります。液体の場合は分子の電気双極子に基づく配向分極はマイクロ波帯で電界の変化に対して遅れを生じます。この遅れがある程度大きくなるとシミュレーションでも「遅れなく」の仮定が成り立たずこれを考慮する必要があります。(後述するDebye分散)
イオンや電子などの荷電粒子による分極は配向分極に対して圧倒的に応答が早く、イオン溶液や金属ではその量が大きな値になります。もし分極が電界の変化を打ち消す程度に大きくなると、電磁波は伝搬できなくなります。この状態は大量の自由電子をもつ金属で特徴的ですが、イオン溶液の場合も低周波数領域やマイクロ波帯でこのような状態に近づきます。
(eq.3.a)、(eq.3.b)に基づくconventional - FDTD法は上の図で示したように分極が「遅れなく」、「電界変化を打ち消さない程度」であるという仮定を含んでいます。金属や導電性を示すイオン溶液の場合は以下に示すRC法を用いてモデル化するのが一般的です。

有限速さの分極を考慮する

 
時間に対して有限の速さの分極をモデル化するためにFDTD法ではRC法(Recursive Convolution scheme)が使用されます。この方法は電束密度を時間領域の畳み込み積分で求め、この電束密度の式をマクスウェル方程式に代入して(eq.3.a)に替わる有限速度の分極を考慮した式を求めます。
(eq.6)は(eq.3.a)の右辺第1項-σ/εEが(eq.5)に入れ替わりその離散表現が(eq.6)の右辺第1、第2項で表されています。なお電気感受率Χが0の時、つまり分極がないか、分極の応答に遅れがない場合は(eq.6)と(eq.3.a)は全く同じ式になります。
またこの手法を用いたFDTD法をRC-FDTD法と呼ぶこともあります。更にRC-FDTD法の時間精度を向上させたPL(Piecewise Linear)RC-FDTD法も提唱されていますが、ほとんどの場合RC-FDTD法で十分な解析精度が得られます。

極性分子やイオンの動きを考慮する Debyeモデル

 
液体の誘電特性はマイクロ波帯で非常に強い周波数依存性を持ちます。これは原子分子の双極子が電界に対して応答する配向分極が比較的遅く、電磁界の変化に対して遅れを生じるためです。
Debyeモデルでは物質の電界変化に対する分極を配向分極と変位分極に分けて考えます。上の図で分極を示す点線が垂直になっている部分が変位分極に相当し、曲線部分が配向分極です。
イオン溶液の場合、遅い配向分極も低周波数の場合には電界の変化についていくため、物質としては導体に近い特性を示します。周波数が高くなるにしたがって、イオンの運動は電磁界の変化に対して遅れ始めるので誘電体的な挙動を示し始めます。
マクスウェル方程式では前述した通り、「電子」や「荷電粒子」あるいは「配向分極」のことは考慮していませんから、そのままの形ではイオンの電磁界に対する応答を考慮したシミュレーションは行えません。

電子の運動を考慮する Drude, Lorentzモデル

 
イオン溶液は高周波数では前述のDebyeモデルでその周波数依存性をよくモデル化出来ますが、低周波数になると分極の元となる荷電粒子としてのイオンの運動が電磁界の変化を打ち消すほどに大きくなりDebyeモデルではモデル化できません。
このような周波数領域では荷電粒子が電界の変化を瞬間的に打ち消してしまう状態をモデル化したDrudeモデルが使用されます。Drudeモデルは本来的には可視光領域の金属自由電子を中心モデル化されたものですが、低周波数領域で導電性があるイオン溶液のモデル化でも用いられます。
なお可視光領域の金属自由電子は原子の正電荷によって束縛されるので、これをモデル化する場合にはLorentzモデルを使用します。Lorentzモデルでモデル化される現象はマイクロ波帯ではほとんどありません。但し、物性変化を分散モデルで表すために「便宜上」用いられることがあります。
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第3章第3節 FDTD法に関する仮定

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分極の振る舞いに関する仮定

 
構成方程式(eq.2.a)~(eq.2.c)は時間変化の項を含みません。例えば電束密度と電界の関係を示した(eq.2.b)は電束密度が電界の値に対して、誘電率を比例定数として瞬間的に必ず比例することを表しています。
電磁波の周波数が十分低く、分極が電界の変化に対してついていける場合は妥当なことは想像できます。つまり上図の「構成方程式が描く素早い分極」を記述しています。
多くの誘電体でこの仮定は近似的に妥当なのですが、液体では少し事情が異なります。液体の場合は分子の電気双極子に基づく配向分極はマイクロ波帯で電界の変化に対して遅れを生じます。この遅れがある程度大きくなるとシミュレーションでも「遅れなく」の仮定が成り立たずこれを考慮する必要があります。(後述するDebye分散)
イオンや電子などの荷電粒子による分極は配向分極に対して圧倒的に応答が早く、イオン溶液や金属ではその量が大きな値になります。もし分極が電界の変化を打ち消す程度に大きくなると、電磁波は伝搬できなくなります。この状態は大量の自由電子をもつ金属で特徴的ですが、イオン溶液の場合も低周波数領域やマイクロ波帯でこのような状態に近づきます。
(eq.3.a)、(eq.3.b)に基づくconventional - FDTD法は上の図で示したように分極が「遅れなく」、「電界変化を打ち消さない程度」であるという仮定を含んでいます。金属や導電性を示すイオン溶液の場合は以下に示すRC法を用いてモデル化するのが一般的です。

有限速さの分極を考慮する

 
時間に対して有限の速さの分極をモデル化するためにFDTD法ではRC法(Recursive Convolution scheme)が使用されます。この方法は電束密度を時間領域の畳み込み積分で求め、この電束密度の式をマクスウェル方程式に代入して(eq.3.a)に替わる有限速度の分極を考慮した式を求めます。
(eq.6)は(eq.3.a)の右辺第1項-σ/εEが(eq.5)に入れ替わりその離散表現が(eq.6)の右辺第1、第2項で表されています。なお電気感受率Χが0の時、つまり分極がないか、分極の応答に遅れがない場合は(eq.6)と(eq.3.a)は全く同じ式になります。
またこの手法を用いたFDTD法をRC-FDTD法と呼ぶこともあります。更にRC-FDTD法の時間精度を向上させたPL(Piecewise Linear)RC-FDTD法も提唱されていますが、ほとんどの場合RC-FDTD法で十分な解析精度が得られます。

極性分子やイオンの動きを考慮する Debyeモデル

 
液体の誘電特性はマイクロ波帯で非常に強い周波数依存性を持ちます。これは原子分子の双極子が電界に対して応答する配向分極が比較的遅く、電磁界の変化に対して遅れを生じるためです。
Debyeモデルでは物質の電界変化に対する分極を配向分極と変位分極に分けて考えます。上の図で分極を示す点線が垂直になっている部分が変位分極に相当し、曲線部分が配向分極です。
イオン溶液の場合、遅い配向分極も低周波数の場合には電界の変化についていくため、物質としては導体に近い特性を示します。周波数が高くなるにしたがって、イオンの運動は電磁界の変化に対して遅れ始めるので誘電体的な挙動を示し始めます。
マクスウェル方程式では前述した通り、「電子」や「荷電粒子」あるいは「配向分極」のことは考慮していませんから、そのままの形ではイオンの電磁界に対する応答を考慮したシミュレーションは行えません。

電子の運動を考慮する Drude, Lorentzモデル

 
イオン溶液は高周波数では前述のDebyeモデルでその周波数依存性をよくモデル化出来ますが、低周波数になると分極の元となる荷電粒子としてのイオンの運動が電磁界の変化を打ち消すほどに大きくなりDebyeモデルではモデル化できません。
このような周波数領域では荷電粒子が電界の変化を瞬間的に打ち消してしまう状態をモデル化したDrudeモデルが使用されます。Drudeモデルは本来的には可視光領域の金属自由電子を中心モデル化されたものですが、低周波数領域で導電性があるイオン溶液のモデル化でも用いられます。
なお可視光領域の金属自由電子は原子の正電荷によって束縛されるので、これをモデル化する場合にはLorentzモデルを使用します。Lorentzモデルでモデル化される現象はマイクロ波帯ではほとんどありません。但し、物性変化を分散モデルで表すために「便宜上」用いられることがあります。
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第3章第4節 解析事例
(2つの位相制御ポートを持つ円筒キャビティ)

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今回は2つの位相制御されたループアンテナからマイクロ波が給電される円筒キャビティでセラミックハニカムを加熱するシミュレーションを行います。
2つのループアンテナには2.438GHzのマイクロ波が印加され、内部の加熱量分布を制御する目的でそれぞれの位相差を変更するものです。
円筒キャビティを含むW×D×H=150×150×20の直方体領域を解析領域として75×75×20のメッシュを用いて解析を行います。この解析では金属で囲まれた円筒キャビティをモデル化するために解析領域全体を金属(PEC)としてキャビティ内部に空気(Vacuum)の円筒を設定します。また解析の収束性を確認するために解析領域中心にプローブを配置します。
このモデルは非常に単純なモデルですが、様々なチェックポイントがあり見た目以上に奥の深いシミュレーションです。

平均物性の使用について

 
電磁波解析を行う際に、対象となる物質は単一の物質とは限りません。例えば食品は典型的な混合物ですし、セラミックなども微粉末と空気の混合物とも考えられます。
電磁波解析で混合物を対象にする場合は体積分率を考慮した平均の誘電物性を一般的に用います。「ごはん」は主に水と炭水化物と粒の間の空気の混合物ですがこれらを別々には扱わず「ごはん」の誘電物性をシミュレーションでは用い、妥当な結果が得られます。
ところがこの近似方法があまり妥当しないケースがいくつか存在します。その一つは混合物の物性が大きく異なっている場合です。例えば金属酸化物を加熱するために活性炭を混合するケースがありますが、この場合の加熱具合は体積分率から得られる誘電物性の損失よりもはるかに大きくなる場合があります。
また混合物が構造を持っていてその構造が平均の誘電物性に大きく影響する場合です。例えば今回の例題で取り上げるハニカム構造では構造に方向性が強いため平均の誘電物性は異方性を持ちます。
以上のように平均の誘電物性を用いる場合はその妥当性が問題になる場合があることに注意が必要です。

ハニカムのモデル化

 
加熱対象のコーディエライトハニカムのモデル化を検討します。ハニカムのように小さな構造の繰り返しはシミュレーションで用いるメッシュで再現すると非常に細かなメッシュが必要になり、現実的ではありません。
細かいメッシュを用いずにハニカムをモデル化しようとした場合2つの方法が考えられます。一つは細かいハニカム構造を纏めて粗いハニカム構造でモデル化する方法です。もう一つはハニカムを占める空間とハニカム材の体積から得られる平均物性を用いてモデル化する方法です。
今回の解析対象では、異方性の誘電率を用いない限り前者の方がより実際のモデル化に近くなります。ハニカムのように一定の方向に規則的な構造は平均的な物性を見た場合に非常に異方性が強くなります。従って後者の一つの平均物性の値を与えるモデル化ではハニカムの誘電特性を再現することが出来ず解析結果も大きく異なります。

ループアンテナのモデル化

 
円筒キャビティにマイクロ波を導入するループアンテナは一般的に同軸ケーブルの中心導体をキャビティに接触させて作製されます。このとき出来る導線とキャビティのループがアンテナとして動作してマイクロ波をキャビティ内部に磁界結合して供給します。
このモデルを直接モデル化しようとすると同軸ケーブル及び中心導体を形状再現し更に同軸側からモードを考慮した波源の追加が必要です。不可能ではありませんが、非常に細かいメッシュが必要で、本来の目的であるキャビティ内部の加熱様式のシミュレーションとは離れたところで大きなコストがかかってしまいます。
これを避けるために今回はループアンテナ位置で発生する磁界を直接点源で与える方法でモデル化します。この方法であれば細かい形状を一切作成する必要がなく、点源を設定するだけで済みますし、細かいメッシュを使う必要がありません。
勿論給電部分の設計のためのシミュレーションを目的とするような場合はこの方法は向きませんが、目的に応じて近似したモデル化を使うことで解析時間の大幅な短縮が図れます。

境界条件と出力の設定

 
今回の例題では境界条件の設定はキャビティの壁面が解析領域境界面に等しい面は金属ですから設定は自明です。なお導波管でマイクロ波を照射するモデルの場合、電磁波の進行方向と反対側の境界条件は吸収境界条件を設定します。
この時、PML(Perfect Matched Layer)はその名の通り、入射するマイクロ波に対して完全に整合が取れてかつ損失の大きい層(Layer)を用いるので実質的なメッシュ数の増大を伴います。多くの場合PMLは6~12層程度のLayerを用いるので、これを含めたメッシュ数で計算規模を考えます。
PMLは一般的な手法では最も精度が良いため、多くの研究で用いられていますが、計算時間の増大を伴うため必ずしも第一選択肢として考える必要はありません。特にキャビティ内部の解析の場合、MUR1でも比較的良好な特性が得られます。一方でアンテナ解析などで遠方界を求めるような解析ではPMLの使用が一般的です。
また時間平均された加熱量分布はソフトウェアによってはデフォルトの設定では出力されません。加熱量分布は「損失」または「SAR」などの変数名で設定する場合もありますので注意してください。

収束性と解析の妥当性の確認

 
この解析で解析領域中心に設定したプローブのZ方向電界成分の時系列データをプロットしています。完全とは言えませんがおよそ正弦波に近い波形になっておりおよそ定在波の解析結果が得られていると考えられます。
コンターは左側がハニカム上部、右側がハニカム高さ中心の加熱量分布でほぼ双方が同じ分布になっていることが確かめられます。実はこの結果はハニカムのモデル化を体積考慮した平均物性で行ったために、一部重要な現象が再現できていません。一度解析結果が得られると代表的な面にのみ注目してしまいますが、各断面も確認してどのような結果が3次元的に得られているか確認することが重要です。
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まとめ FDTD法で仮定されていることと注意点・対処

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FDTD法でシミュレーションを行う場合に、確認しておくべき定式化やモデル化上のポイントを表にまとめました。以上のポイントは解析対象によっては当てはまるものも、当てはまらないものもありますが、知識として持っておくことで、シミュレーションに関する理解がさらに深まります。

マクスウェル方程式・構成方程式由来

仮定
注意点・対処
電磁界の損失は電流に基づく
実際には誘電損失や磁性損失も存在する。誘電損失は電流の項に丸め込まれ、磁性損失は次項の追加項で対応する。
 
磁界の損失はない
金属粒子などでは磁界による加熱があり得る。シミュレーションではマクスウェル方程式に本来含まれない項を追加した式を用いる。
 
電磁界の変化に分極は十分に速く応答する
液体やイオン溶液ではしばしば分極が電磁界の変化に対して遅れる。これを考慮するためには電束密度を誘電率と電界の積の畳み込み積分で評価する。この方法をRC法と呼ぶ。この畳み込み積分では分極のモデル化が必要で次項のDebye, Drude, Lorentz分散モデルが代表的に使用される。
 
電磁界の変化に分極は十分に早く応答し量的に定常化する(D=εE)、かつその大きさは電磁界を打ち消すほどではない(ε≧1)
液体などで遅い配向分極を考慮する場合Debye分散でモデル化される。また自由電子やイオンの運動で分極が電磁界を打ち消す大きさで起こり、電気伝導性を示す場合DrudeモデルやLorentzモデルでモデル化される。いずれのモデルもシミュレーションで適用するにはRC法やPLRC法が前提となる。
 

物性値

仮定
注意点・対処
混合物の誘電物性は体積を考慮して求められる
妥当しない場合がある。特にハニカムなど構造の方向性が強いもののモデル化は体積考慮の平均物性では妥当しない場合が多い。
 
等方的である
構造が存在する場合は異方性が存在する。構造の例は大きいものではハニカムが代表的だが高分子の分子並びや結晶の方向性などでも異方性が生じる。異方性の考慮は誘電率テンソルεijで行われるが測定値が存在しない場合も多い。
 

励振源に関する事項

仮定
注意点・対処
理想的なモードで励振される
実機では給電部分からある距離を置いてモードが発生するケースが多く、この影響が大きくなるシミュレーションでは注意が必要。(アイリス・給電部の距離のシミュレーションなど)
 
給電部は細かい構造が多い
細かい構造をシミュレーションで再現しようとすると、計算コストが増大し難易度も上がる。目的に合わせて簡略化したモデリングが有効かつ必要。
 

メッシュによる近似

仮定
注意点・対処
曲面は階段状で近似できる
波長に対して十分なメッシュが確保されている場合は問題ない場合もある。定量的に分布の対称性が確保できない場合がありこの時はメッシュを少しずつ増やして解析結果を確認する。

収束性について

仮定
注意点・対処
解析結果は定在波が得られている
実際に解析対象の系が定常状態になり定在波が分布しているかは解析領域の代表的な点で入力波形に近い波形が得られているかを確認する必要がある。
 
 
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