by 💧Aqua
空へ、宇宙へ
子どものころ、空に向かって思いきりジャンプしたことがある。
けれど、体はすぐに地面へ戻ってしまった。
小石を空へ投げても、
放物線を描いて落ちてくるだけだった。
そのとき、ふと見上げた空を
一羽のカラスが軽々と横切っていった。
なぜ、鳥は飛べるのだろう。
人は飛べないのに。
鳥の体は軽く、骨の中は空洞で、
重い顎を捨てて嘴を選んだ。
強い胸の筋肉が羽ばたきを支え、
風切り羽が空気をつかんで揚力を生み出す。
空を飛ぶために、
鳥は体そのものを“空の形”に進化させてきた。
では、プテラノドンのような巨大な翼竜はどうだろう。
全長7メートルの大きな体でも、
骨は軽く、翼は広く、
海の上昇気流をつかんで
グライダーのように長い距離を滑空した。
空を飛ぶとは、
ただ羽ばたくことではなく、
空気と体の形を調和させることだった。
けれど人間は、
骨が軽くなれば病気になってしまう。
羽をつけても、体は重すぎて飛べない。
だから人は、
自分の体を変えるのではなく、
“空を飛ぶ道具”を作ることを選んだ。
1903年12月17日。
ライト兄弟は、
ノースカロライナ州キティホークの砂丘で
世界初の有人動力飛行に成功した。
飛行時間はわずか12秒。
距離は36.5メートル。
それでも、その短い飛行は
人類が空へ踏み出した最初の一歩だった。
その後、人は空を越え、
さらにその上の宇宙へ向かった。
1970年、アポロ13号の宇宙飛行士たちは、
地球から約40万キロ離れた月の裏側へ到達した。
ISSの高度の千倍。
地球を十周するほどの距離。
人類が到達した“最も遠い空”だった。
空へ向かう挑戦は、
飛行機やロケットだけではない。
気球で成層圏まで上がり、
そこから生身で音速を超えて落下した者がいる。
山の頂を極め、
地球の屋根に立った者もいる。
戦闘機で3万メートルを超える高度へ到達した者もいる。
人は、
水平に旅をするだけでなく、
垂直方向へも世界を広げてきた。
空へ、そして宇宙へ。
それは、
「もっと遠くへ行きたい」
「もっと高くを見たい」
という、人の心の中にある
小さな願いの延長線上にある。
ジャンプしても届かなかった空に、
いま、人は翼を持っている。
空を見上げるたびに思う。
人類の歴史とは、
地面に縛られた体で、
それでも空を夢見続けた
長い長い物語なのだと。
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