「パックの中の春」
by Aqua
スーパーの棚に並んだ、
透明なパックの七草セット。
その前で、
ひとりの子どもが立ち止まった。
「ねえ、これ、なに?」
「七草よ。明日の朝に食べるの。
お正月に疲れたおなかを休めるためにね。」
「ふーん……でも、これ、どこから来たの?」
親は少し考えて、
「畑かな……?農家さんが育ててくれたのよ」と答えた。
そのとき、
パックの中のセリの葉に、
小さなしずくが光った。
「ぼくは、あの畑の朝露だったんだよ。
セリはね、川のそばで育ったんだ。
ナズナは、風に揺られて、
ホトケノザは、霜の中でじっと春を待ってた。」
子どもは、じっとパックを見つめた。
「この草たち、がんばってきたんだね。」
「うん。だから、食べるときは、
“ありがとう”って言ってあげてね。」
1月7日の朝、
七草粥を前に、子どもは手を合わせた。
「いただきます」
その言葉に、
パックの中のしずくが、
そっと光って消えた。
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