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中空銀ナノ粒子の解析
Abstract

電磁波解析ソフトKeyFDTDを使用して中空の銀ナノ粒子を解析しました。 通常、銀は電磁波をほぼ反射しますが、ナノスケールでサイズ制御するとLSPR(局在表面プラズモン共鳴)によって特定の周波数の電磁波を強く吸収するようになります。 LSPRを起こす波長は形状や構造によって変化し、所望の特性を得るために様々な構造が研究されています。 中空銀ナノ粒子の場合は、粒子が大きいほど、また銀部分の厚みが薄くなるほどLSPR波長が長波長側にシフトする特性を持ちます。 今回は、銀部分の厚みを変更した中空銀ナノ粒子をKeyFDTDで解析し、LSPR波長が厚みによってシフトする様子を確認できました。

 

1. 解析概要

ナノスケールでサイズ制御した金や銀粒子は、可視光付近の波長で LSPR(局在表面プラズモン共鳴)により、電磁波を強く吸収する。 中でも中空銀ナノ粒子(Fig.1)は、粒子サイズが大きいほど、また外径と内径の差であるシェル厚が薄いほどLSPR波長が長波長側にシフトする。 本レポートでは、シェル厚の異なる2種類の中空銀ナノ粒子をFDTD法でシミュレートした結果を報告する。

2. 解析条件

中空銀ナノ粒子のモデル図をFig.2に示す。 x方向に電界成分Exを持つ可視光の偏波をz軸正側から負側に向けて入射する。 xy方向に周期境界条件を適用し、粒子間隔80nmで平面上に正方に並んだ中空銀ナノ粒子層をシミュレーション対象とした。 銀の複素屈折率はDrudeモデル(eq.1)で近似した。

Drudeモデル
Drudeモデル(eq.1)

ここでωは入射光の角周波数であり、分散パラメータは、ε∞ = 5.00ωp = 1.36 * 10^16vc = 7.70 * 10^13とした。 このパラメータを(eq.1)に適用し近似した複素屈折率と銀の複素屈折率をFig.3に示す。 Table.1の解析条件で、電磁波解析ソフトKeyFDTDを用いたシミュレーション結果から散乱と吸収を合わせた消光度Qのスペクトルを導出した。

中空銀ナノ粒子
Fig.1 中空銀ナノ粒子
解析モデル
Fig.2 解析モデル
Table.1 解析条件
周波数 350 ~ 750 [THz]
境界条件 x / y : PREIODIC
z: MUR1
解析領域 150x150x2700 [nm]
メッシュサイズ 2.5 [nm]
  = λ / 160 ~ 400
  = λ / 120 ~ 300(水中)
タイムステップ 0.417188×10^-17 [sec]
複素屈折率と銀の複素屈折率
Fig.3 複素屈折率と銀の複素屈折率

3. 解析結果

消光度Qは、透過率Tを中空銀ナノ粒子層透過後のポインティングベクトルから計算し、Q = 1 - Tから求めた。 得られた消光度Qのスペクトルと文献値[1]をFig.4に示す。 シミュレーションでは、シェル厚5nmは波長710nm付近、シェル厚10nmは波長530nm付近で、LSPRによる急峻な消光度の上昇が得られた。 また、シェル厚を薄くすることでLSPR波長が長波長側にシフトする結果が得られた。 文献値と比較すると、シェル厚10nmはピーク波長や形状がよく一致している。 シェル厚5nmの場合は、ピーク位置にずれが生じているが、メッシュ幅を小さくすることでより一致すると考えられる。

消光度スペクトル
Fig.4 消光度スペクトル(実線:文献値、点:FDTD解析値)

銀部分の厚み10nm

AgShell10nm

波長545nm

10nm_545nm

波長710nm

10nm_710nm

銀部分の厚み5nm

AgShell5nm

波長545nm

5nm_545nm

波長710nm

5nm_710nm

4. まとめ

電磁波解析ソフトKeyFDTDを用いて中空銀ナノ粒子の消光特性を解析した。 実験結果とよく一致する結果が得られた。

参考文献
[1] 門 晋平, "中空銀ナノシェルの簡便合成とプラズモン特性", 化学工業 Vol.67 No.6 p23, 2016/6

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