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電磁波解析(マイクロ波)同軸形厚膜抵抗減衰器の透過特性

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Abstract

電磁波解析ソフトウェアKeyFDTDを用いて、アッテネータの一種である同軸形厚膜抵抗減衰器の透過特性を導出した。 周波数が高くなるに連れて透過損失が小さくなる物理現象と同様な傾向が見られた。今後は、実験値などとの比較で定量的な検討をおこなう。


1. 解析概要

アッテネータの一種である同軸形厚膜抵抗減衰器は、一般に同軸形薄膜抵抗減衰器よりマイクロ波領域での性能は劣るが、安価で耐電力が高い利点がある。本報告書では、同軸形厚膜抵抗減衰器の特性解析における、FDTD法の有効性を検討する。電磁波解析ソフトKeyFDTDを使用して、以下の形状を持つ同軸形厚膜抵抗減衰器について透過損失の周波数特性を導出し、検討を行った。

2. 解析条件

Fig.1に解析モデルを示す。

同軸形厚膜抵抗減衰器の解析モデル
Fig.1 Simulation model

解析モデルの設定をTable.1に示す。メッシュの分割数は50×100×100、x、y方向の境界条件にはPEC条件、z方向にはMurの1次吸収境界条件を適用した。各物質の物性値は、内部空洞に導電率0.0[S/m]、比誘電率1.0、同軸線・電極膜に導電率1.0×109[S/m]、比誘電率0.0、抵抗膜に導電率6.0×10-4[S/m]、比誘電率1.0、基板に導電率0.0 [S/m]、比誘電率9.4を適用した。FDTD法における解析の都合上、減衰器の厚みを実際より厚くしているため、導電率を小さくすることで抵抗率を同じにしている。このモデルで、TEMモードの正弦波を、周波数6~12[GHz]の範囲で0.5[GHz]刻みで(Fig.1)の(h)の位置からz方向に入射し、透過特性を算出した。

Table.1 Model property
図中記号部品名xyzr
(a)アッテネータ内部空洞Vmin00-203.3
Vmax00103.3
(b)入力同軸線Vmin00-200.1
Vmax00-8.9250.1
(c)入力側電極膜Vmin-2-0.1-8.925
Vmax20.1-2.275
(d)抵抗膜Vmin-3.3-0.1-2.275
Vmax3.30.22.275
(e)出力側電極膜Vmin-2-0.12.275
Vmax20.18.925
(f)出力同軸線Vmin008.9250.1
Vmax00100.1
(g)基板Vmin-3.3-0.6-8.925
Vmax3.30.18.925
(h)同軸導波管ポートcenter00-18(inner)0.1
normal001(outer)3.3

3. 解析結果

透過損失T[dB]の導出には、まず、各周波数でFig.1の減衰器のあるモデルと、Fig.1から電極膜(c)、(e)抵抗膜(d)、基板(g)をなくし、同軸線(b)を(f)まで延長させた減衰器のないモデルの2種類で解析を行う。そしてそれぞれが定常状態になった後に時間平均を計算する。最後に、減衰器があるモデルと、減衰器がないモデルにおいて、z方向端部(z=100)で、x-y平面におけるポインティングベクトルの総和Pa、Pcを求め、(eq.1)に代入して導出する。

    \[T = 20log_{10} \frac {P_a} {P_c} \cdots(eq.1)\]

(eq.1)を用いて周波数ごとの透過損失を計算した結果を(Fig.2)に示す。z方向端部(z=100)の透過損失の周波数特性である。6[GHz]程度まで周波数が低いと透過損失が大きく、周波数が高くなるに連れて透過損失が小さくなる傾向は物理現象と一致していた。

同軸形厚膜抵抗減衰器の透過特性
Fig.2 Frequency characteristics of transmission loss

4. まとめ

電磁波解析ソフトKeyFDTDを用いて同軸形厚膜抵抗減衰器の透過特性を調べた。今回は、物理現象に近い結果が得られたため、今後は実験値などとの比較によって定量的な検討を進めたい。

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