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電磁波解析における金属の分散性近似

FDTD法は適用可能な周波数範囲が広く、THz~可視光~紫外全域でシミュレーションが可能です。
さらに一度に複数周波数をシミュレーションでき、透過・反射などのスペクトルを効率よく求められるため、光学特性の解析に非常に向いています。

ただし、FDTD法は支配方程式にマクスウェル方程式を用いていることから、シミュレーションに複素誘電率、複素透磁率の情報が必要です。
複素透磁率は可視光帯以上の周波数ではほぼ 1+j0 となるため無視できます。
複素誘電率については、THz以下の周波数では物性を誘電率で基本的に表現しますが、THz以上の周波数では物性の表現に誘電率(ε)ではなく屈折率(n)を用いることが多くなります。
これらの屈折率と誘電率は以下の関係式で結びつけられるため、屈折率の情報を使ってシミュレーションを行います。

    \[ \varepsilon_r' = n^2 - k^2 \]


    \[ \varepsilon_r'' = 2nk \]

また、金属は可視光帯で分散性を示すため、分散性の再現がシミュレーションには必要となります。
例えば電磁波解析ソフトKeyFDTDではDebye、Drude、Lorentzの分散モデルを組み合わせて分散性を近似しています。
分散モデルによる近似は解析事例に公開していますが光学特性をよく再現できています(金、銀、銅の可視光帯反射シミュレーション)。

物質によっては分散性が異なるため、分散性の複雑さや解析したい周波数範囲にあわせて分散モデルを組み合わせ、パラメータを探索する必要があります。
そこで、可視光~紫外で取り上げられることの多い金属について弊社の過去の知見から得られた分散モデルとパラメータの設定例を紹介します。

※分散モデルの複素屈折率について
分散モデルの複素屈折率は、分散モデルで近似した複素誘電率を以下の式で複素屈折率n、kに変換しています。

    \[ n = \sqrt{ \frac{ \varepsilon_r'+\sqrt{\varepsilon_r'^2+\varepsilon_r''^2}}{2} } \]


    \[ k = \sqrt{ \frac{ -\varepsilon_r'+\sqrt{\varepsilon_r'^2+\varepsilon_r''^2}}{2} } \]