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万179.いずれも夫婦愛の物語 一人静 万葉集

ヒトリシズカ(一人静 、学名:Chloranthus japonicus )は、日本、朝鮮、中国原産で、センリョウ科チャラン属の多年草の野草です。日本では、北海道~九州の山地の林下に自生します。
ヒトリシズカ(C. japonicus )は、スプリング・エフェメラル(spring ephemeral、はかない春の植物)やプリバーナル・プラント(prevernal plant、早春の植物)と呼ばれる植物の一つで、早春の一時期だけ地上に姿を現し木々に若葉が芽吹くときには地上から姿を消してしまいます。この、スプリング・エフェメラルとは、ギリシア神話に登場する「エフェメロス( ephemeraos」に因みます。
草丈は、20~30cmです。茎頂部に4枚の葉が対生します。葉は楕円形で先端が急に尖ります。初夏に、1本の穂状花序に白い小花を多数つけます。花には花弁や萼が無く、雄蕊と雌蕊だけです。白く見えるものは雄蕊です。花名は静御前が吉野山(奈良県)に舞う姿に見立てて付けられました。

万葉集では、フタリシズカ(二人静、学名:学名:Chloranthus serratus)とともに、次嶺經(つぎねふ)ではないかとされます。以下に、万葉集で詠われた歌をのせます。

万葉集とヒトリシズカ

万葉集 第13巻 3314番歌
作者:不詳
題詞:無
登場する草木:次嶺經(つぎねふ)=ヒトリシズカ(一人静)、または、フタリシズカ(二人静)

原文
次嶺經 山背道乎 人都末乃 馬従行尓 己夫之 歩従行者 毎見 哭耳之所泣 曽許思尓 心之痛之 垂乳根乃 母之形見跡 吾持有 真十見鏡尓 蜻領巾 負並持而 馬替吾背

読み
つぎねふ 山背道(やましろぢ)を 人夫(ひとづま)の 馬より行くに 己夫(おのづま)し 徒歩より行けば 見る毎(ごと)に 音(ね)のみし泣かゆ そこ思ふに 心し痛し たらちねの 母が形見と 我が持てる まそみ鏡に 蜻蛉領巾(あきづひれ) 負(お)ひ並(な)め持ちて 馬買へ我が背(せ)

意味
ヒトリシズカが生えているような 山背(京都)への道を ほかの夫は 馬で行くのに わが夫は 歩いていくのを 見るたびに 泣けてくる そう思うと 心が痛い 母の形見に 私が持っている 上等な鏡と 蜻蛉領巾(あきづひれ、肩掛け=ショール)を 持って行き 馬を買いなさい あなた(夫)。

花言葉や詳しく知りたい方はこちらをご覧下さい。

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